ふとした瞬間に思い出してしまう話

「わたしけっこう料理の手際がいいと思ってたのよ。」とにわかに母が言った。

まあ料理の手際はわるくないと思ったけど、急にどしたん、と思ったら、

「いままで、ごはんを作ってて下にこぼしたことがなかったのよね、
 でもこの間、作ってる最中にこぼした跡に気が付いて、それもけっこう大きくこぼしてて、
 だからキッチンペーパーで拭いたのよ。
 ああ、今まで料理上手だと思ってたのに、実はそうじゃなかったのかなーとショックに思ってたんだけど、
 よく考えてみたら、今まであっくんがこぼしたものを舐めたり食べたりしてたんだなーと気が付いたの。」

あっくんというのは実家で飼っていたチワワ。
飼っていたという過去形なのは、この8月のお盆になくなってしまったから。
こうゆう日々の中に、いなくなってから気づく一緒に暮らしていた痕跡を発見してしまうものんだんだなー、