緑色の輪ゴムがこのカバーによく似合っていたんです。

佐藤正午
「スペインの雨」

モノクロだからなのか、
なぜかこのビートルズの写真は物悲しい。
さらに、この写真のファンたちはとても無表情で
まるでヒットラーを見ている民衆のような顔してる。
(これは彼らがアメリカに行った時の写真です)
この暗さが、スペインの雨というタイトルにぴったりで。
スペインの雨空は知りませんが、

このひとの書く文章は、妙に物悲しい。
なんだか過去にとらわれているようで、
出口のない頭の中だけでぐるぐる回っている思考のようで、
どうもすっきりとはしない。

この本は9つの恋愛に関する短編集。
ハッピーエンドでも、バッドエンドでもない。
ただ、こういうことあったよなぁと
何かの拍子でぱっと出ることはあっても、
あえて誰かには語りたくない。けれど、忘れたくない。
どこか自分の中に大切に残しておきたいと思うような、
印象的なお話が多かったな。



からっと晴れた、旅日和の電車の中じゃなく、
無機質なお天気に左右されない地下鉄の中で読むのが気分。