ミキとマリのこと

中流階級の子どものおそらく半数以上は思うであろう、夢。
犬を飼いたい。

たぶんにもれず、わたしもその夢を抱いていた。
小学校4年生。
マンションから今の家へ引っ越すと同時に、
家族の気持ちがなんとなーくひとつになり、
犬を飼おう、ということにあいなった。

犬ならば柴犬。(これもなんとなーく決まっていた)
休みの日に家族3人でペットショップへ見に行った。

その日5軒目。どこかも知らない街に来ていた。
もう最後かな、と入ったペットショップ。
そこには3匹のきょうだい柴犬がいた。
どの子もみんな、わたし!わたし!とこっちへ近づいてくる。
選べ、といっても基準なんてもってないし、みんなかわいい。
どうしようか、と迷っている間に時間も経ち、その間にも
犬たちはみんなアピールしている。

その中で、迷ってるわたしたちに飽きたのか、
くるっと後ろを向いてねそべってる犬がいた。
なんだかそのテンションがうちの家族に合っているような気がして、
これまた家族の気持ちがなんとなーくひとつになり、その柴犬に決めた。

茶色と言うより少し黒っぽい毛の女の子。

柴犬は小さなダンボールに入れてもらって、後部座席のわたしの隣にいた。
早く、早くだっこしたい、とせがんだけれど、母親に車の中はゆれるし、
落とすかもしれないからだめ、といわれて少ししょんぼりした。

そうだ、名前を決めよう!と。
母親は最初、なぜかジェニーがいいと言っていた。
柴犬なのに金髪ガールのような。

結局のところ名前はミキに決まった。
マリとミキの2文字同士でゴロがよいのと、
その当時、日曜日の朝にやっていたママレードボーイというアニメの
ヒロインのみきがわたしも母も好きだったからだ。

家族がふえた。
ミキがうちに来た。



ちょっとむかしを思い出すことがあったので、
これは3年前のちょうどこの時期にべつのところに書いてたことなんだけど、
忘れないためにここに。

これを書いた日に、ミキと思って犬のキーホルダーを買った。

大事にしてたんだけど、とれちゃって2年ほど鍵につけずに家に置いてた。
ある日、ふと今日は鍵につけていこうとそのキーホルダーをつけたら、
なんとその日にひったくりに遭った。
転んだけど、あざができただけで(もちろんかばんはなくなったけど)、無事。
なんだか、不思議な縁を感じて、
もしかしたらミキが守ってくれたんじゃないかなーと思っている。